【まとめのまとめ】
チャンネル登録はこちら
https://goo.gl/QN6ioA
先生が明るいせいか、
現場は健康的でのびのびと
した雰囲気だった。
現場に入ってまず思ったことが
「絵うめええええええええ
!!!!!!」
ということだ。
漫画家を目指し始めて一番の
衝撃だった。
信じられないくらい線が細く、
空間の奥行きがすごかった。
トーンで表現される立体感も
常軌を逸していた。
雑誌で見るのと生の原稿は
こうもちがうのかと思った。
俺が今まで頑張って仕上げて
悦に浸っていたものは
なんだったんだ?
簡単な背景を書いてみて、
と言われたので、
持てる力の全てを注ぎ込んで
学校の絵を描いたが、
明らかに線の太さが
Aさんたちのものとは異なり、
幼稚園児が描いた様な酷い
絵に仕上がってしまった。
先生は俺の絵を見て失笑した。
そして、誰にでも出来る
簡単なベタという黒く
塗りつぶすだけの作業が俺の
仕事になった。
ちょwwwww給料はどうなの?
自分より上手い人間が無数に
いるってのを気付くのが遅
すぎるwwww
失笑wwwwww
爆笑
仕事が始まると誰も喋らなくなった。
明らかに空気が一変した。
俺も緊張感を持ってベタに集中する。
「×」印の付いた箇所を
塗るだけの単純作業だったが、
「はみだしてはいけない」と
思うとなかなか時間がかかる。
しばらくして別室から先生が
アシ部屋に戻ってくる。
まだ一枚目のベタ作業に苦戦中の俺。
「え?どういうこと?
なんでこんなに時間かかってるの?」
俺はドキリとした。
「おいC!」と先生は
若干声を荒げて言った。
Cさん「はい」
先生
「お前ちゃんと新人に
時間に対する意識教えたの?
こんなペースじゃ仕事にならないよ」
俺の作業が遅いせいで
Cさんが先生から怒られた。
Cさんは
「俺君、もっと手早く…、
でも丁寧にね」
と俺に言った。
俺は「すみません」と謝った。
この時、既に俺はこの現場の
違和感にうすうす気付いていた。
怖すぎワロタwwww
最初だから仕方ないだろと
言いたいがやっぱり
経験者として扱われるのか
厳しいな
週刊連載作家の中でも大御所
クラスの仕事場環境だ
先生は豪快なルックスだったが、
作業に関してはとてつもなく
神経質だった。
ベタ一つにしてもはみ出しは
もちろん、
ヌリムラが許せず、塗り
忘れにもかなり厳しかった。
そして一つ俺がミスをする
ごとにCさんが叱責された。
Cさんが叱責されるたびに
現場には緊張が走った。
そんなことが初日のわずか
一晩で何度も起きた。
段々と楽しい気分だったのが
恐怖へと摩り替わっていった。
ブラックワロタwww
怒られるのがCでよかった
Bさんが怒られてたら胸が
苦しくなるところだった
「早く丁寧に」ってだいたい
どの仕事でも言われるよな
胃が痛くなる
先生は特にCさんを目の敵に
しているような感じだった。
俺は新米だから仕方ない、
だがCは違うだろ!
みたいなことも何度も言われていた。
他のアシさんもみんな黙って
いて特に助け舟を出すことは
しなかった。
たまに先生に意見を求め
られるときには先生の味方になって、
一緒になってCさんを責め立てた。
俺は俺が起爆剤となり
Cさんが攻め込まれるという
状況に居たたまれなくなった。
しかし、どうしたって
最初ということもあり時間が
かかってしまう。
そして、働き始めてから
30時間がたとうかという
頃に仕事が終わった。
青木雄二 デビュー45歳
「ナニワ金融道」
池田邦彦 デビュー43歳「カレチ」
篠原健太 デビュー31歳
「スケットダンス」
矢口高雄 デビュー30歳
「釣りキチ三平」
三田紀房 デビュー30歳
「ドラゴン桜」
足経験の有無は分からんが参考までに
(篠原は空知のとこでアシ
やってたよね)
*
「30代の漫画家志望者相談
雑談スレ」
より転載
何だこの胸が痛くなるスレは…
軟禁だなwww
30時間wwwwwwwwwww
それからというもの、
先生のCさんに対する
苛立ちは日を追うごとに酷く
なっていった。
何かといえばCさんが怒られていた。
もちろん俺やAさん、
Bさんが叱責されることも
あるのだが、
とにかくCさんが
ターゲットになって
いるという感じだった。
Cさんの顔色は悪く、
明らかに憔悴しているようだった。
「これミスってるよ」
→「すみません」
→
「すみませんじゃないよ、
なんでミスしたの?」
→「うっかりしていたとしか…」
→
「うっかりってなんだよ!
緊張感持ってやってねえって
のかよ!?」
→「そうじゃないです」
→「じゃ、なんでミスったんだよ」
というようなやり取りが続き、
酷いときには何時間も説教が
続くこともあった。
俺もどんどんと心を悪くしていった。
こえー 自害するレベル
インテリ大卒を目の敵にしてるのか
そんなメンタル弱けりゃ
漫画家になんて絶対なれないよ
Cさんの限界が近いことは
誰の目にも明らかだった。
俺の目から見ても
「ありえない」と思うような
ミスを連発していった。
それに比例して先生の
苛立ちも膨れ上がっていった。
「おめーは仕事したくねえのか!!?
やめるか!!??」
と怒鳴られることも多く
なっていった。
本心ではやめたいだろうが、
先生に対する恐怖心が上回り
「いえ、頑張りたいと
思ってます」と答えるだけだった。
怖い…
Cは普通に就職すれば
よかったのにな…
学歴あるんだし
すまんが急な仕事落ち。
ダラダラなチラ裏に
付き合ってくれてありがとう。
中途半端でゴメン。
いつかまたノシ
ちょっ
仕事あってよかったな、
頑張れ
これはひどい
え?
え?
おい
おい
生きて帰れよ
とりあえず今は仕事がある
んだなwww
帰ってきたら再開するんんだよな?
保守する作業開始だな
保守
ほしゅ
保守してくれてありがとう。
人も少ない時間だけど
ダラダラと続きを書いていきます。
きたあああああああああああ
ああああああああああああああああ
ふう
それからもCさんとT
先生との「やめるか!?」
「いえ頑張ります」の問答は
何度か続いた。
先生の理屈は今思い返しても
全て正しいように思えた。
「頑張ると決めたのなら
緊張感を持って」
「ミスするのは緊張感が
欠けている証拠」
「どうしてもミスしてしまう
体質ならばそれを先回りする工夫を」
などなど。
俺自身その理屈には納得できたし、
上手くいくような提案にも思えた。
しかしCさんのミスが止む
ことはなかった。
閉鎖された空間に何十時間も
一緒にいると、
なんだかある種異様な空気に
なってくる。
今振り帰るとT先生の容赦の
ない叱責はどこか常軌を
逸していたことが分かるのだが、
当時はT先生が絶対的な
存在として他の
アシスタントさんの心までも
掌握していた。
そういう映画は何本か観た
ことがあるけど、
まさにあんな感じ。
俺自身も何度かCさんに
助け舟を出すチャンスは
あったのだけど、
T先生理論を聞いていると、
そして他の
アシスタントさんがそれに
賛同しているのを見ると、
なんだかそっちの方が正しい
ような気がしてきてきてしまうのだ。
そして、遂にCさんが崩壊
する日が来た。
その日のCさんの怒られ方は
特に酷かった。
大袈裟でなく10分単位で
怒られていたと思う。
多分「また怒られてしまう」
というような焦りが次の
ミスを生んで、
それによりもたらされた
叱責が憔悴を生み、
あとはひたすらその負の
連鎖が起きるという
感じだったのだろう。
もう誰のどんなアドバイスも
通じなかった。
そしていつものようにT
先生が
「お前やめるか!!?」と
彼に怒鳴った。
Cさんはしばらく黙った後、
静かに「…はい。
もう付いていけません」と言った。
俺は思わず涙がこぼれそうになった。
Cさん…
でもそれはやめるしかないわ
いつもの返答ではなかった
ことに驚いたのか。
その後はT先生も大人しくなった。
そして急にCさんに対して
申し訳なく思ったのか、
優しい態度で
「おいおい、ここで
投げ出していいのかよ」
というような激励の言葉を
掛け始めた。
その後T先生はCさんを説得
し続けた。
そして、そんな先生の態度に
ほだされたのか、
それとも恐怖からか、
最後にはCさんは
「やっぱりもう少し頑張ってみます」
と言った。
そしてそれが俺が聴いた
Cさんの最後の言葉となった。
最後…
次の仕事日。
待てど暮らせどCさんは現れず、
連絡も一向に付かないという
事態が発生した。
Cさんは仕事場ではかなりの
仕事量をこなしていたので、
Cさんがいないとなると
仕事は大変なことになるのは
目に見えていた。
Cさんの担当編集にも連絡が行き、
アシスタント全員で何とか
連絡を取ろうとしたが、
携帯はつながらなかった。
そんなことしている間にも
締め切りは近づいてくるので
俺とアシさんは原稿に着手する。
その回の仕事は地獄だった。
ほんの3時間程度の仮眠で
40時間は働いた
んじゃないかと思う。
今まで簡単な仕事ばかり回さ
れていた俺にも背景、
ケズリなどの仕事が回ってきた。
頭がくらくらして、今まで
標的とされていたCさんが
いなくなったことで先生も
苛々していたように見えた。
俺は一刻も早くここを
辞めたいと思った。
心が折れたんだな……
Cさんが漫画家を目指すのを
辞めると聴いたのはそれから
まもなくのことだった。
実はCさんは既にデビューが
決まっており、
連載案も進行中だったのだが、
編集部へ一本の電話が入ると
「もう漫画家は諦めます。
今までお世話になりました」
と消え入りそうな声で言って
きたらしい。
あれほどの叱責に耐え、
努力し続けたCさんの
漫画家への夢はこうして終わった。
これは同じ道を歩くもの
同士にしか分からないことな
のかもしれないけど、
俺はそれを聴いて本当に
悲しくなった。
彼はもう漫画家としての命を捨て、
新しい道へと歩き始めたのだ。
そして、未だ何も成し得て
いない俺は、
それでも夢から最後の指を
外すことが出来ずに、
こうしてこの環境に身を投じている。
Cさんが消えて、次の標的に
なったのは俺だった。
Cさんの仕事を引き継ぎ
背景などを描くようになった
俺だったが、
日に日にT先生の俺に対する
風当たりはきつくなっていった。
「この背景どれくらいで描ける?」
→「えっと3時間もあれば」
→
「3時間?!遅過ぎるだろそれは。
もっと高い目標を自分に課せよ」
→「えっと、それじゃ2時間で」
→「よし頑張れ」
しかし結局3時間かかる背景。
俺の場合4時間になることも
多かった。
そして
「何でこんなに時間かかっ
てるんだよ!?
2時間で出来るって言ったろ?」
…大体こんな流れが皮切りとなった。
そこから先はまるでCさんと
同じ道をなぞるように、
俺がCさんと同じ目に遭った。
Cさんが駄目になった時点で
常人なら辞めるレベル
会社じゃないんだから
理不尽だと思ったらやめればいいのに
週刊雑誌の担当がついていたなら
相談すればアシ先のツテも
あっただろうに
それでも
Search