あれから7年が経ちました。今年も曲を作りました。3月11日には間に合わなかったのですが、今日発表します。曲名は『空窓』です。
昨年、福島県立浪江高校は3月31日をもって休校しました。その最後の卒業生の生徒さん達から文章を受け取りました。今年はそれを元に歌詞を書きました。
震災が起きた瞬間の気持ち、家族と離れる気持ち、残る人、離れる人、7年という時は10代にとってあまりにも大きな時間です。体験していない僕には想像することしかできません。できるだけその言葉から受け取った想いを、過不足なく音にのせようと思いました。ぜひ、聴いてください。
今年も映像はコトリフィルムに作ってもらいました。2018年3月11日の空です。不思議な空でした。音は今年、菅井さんと共に長年一緒に仕事をしてくれている澤本君にお願いしました。
今でも震災の影響で不自由を強いられている方々に早く安らかな時が訪れますように。そして震災で亡くなったすべての命に、合掌。
洋次郎
空窓
ーー歌詞ーー
あれからお前は どうしているか
見慣れぬ景色は もう慣れたか
俺は俺でさ あれほど聞き馴れなかった
はずの言葉が もう板についたよ
あの時の僕らは何も分からず 親父が言うまま 家を出たんだ
2日か3日ですぐ帰れるものと ばかり思ってた あの日から7年
ケンカしたまま別れた友や 家を出たきり帰らぬ兄や
言えないままの ありがとう、ごめんが宙ぶらりんのまま今日まで来たよ
時が僕らを大きくするけど 時は僕らをあの場所から遠ざける
僕らの故郷は今でもさ 僕らを待っててくれてるだろうか
新しい友と新しい街で 新しいただいまを今は言ってるよ
寂しさ、嬉しさと ほんの少しの 後ろめたさと 一緒に生きてるよ
帰りたいかと聞かれても すぐ答えられない 僕がいるよ
帰りたいのは あの場所よりか あの人とあの時に 帰りたいだけ
さよならをちゃんと 言える別れは 幸せなのかも なんて思ったよ
僕はどうやら 強くなった 強さが何かは よく知らないけど
あの時 どうやら 涙は流し切った
時が僕らを 大きくするけど 時は僕らを あの場所から遠ざける
僕はどうやら 強くなった 弱さが何かは 知らないけど
心の蓋仕方を知っただけかも でもそうでもしないと やってこれなかった
だけど今日だけはこの蓋を 開けてあなたに 会いに行く
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今年もこの日がやってきました。
あれから5年。
とても長いような気もしますが、あっという間だった気もします。
中学1年生だった人は高校3年生に。1歳だった子は小学1年生に。
25歳だった僕も30歳になりました。
5年という月日の間に『復興』の度合いも地域により差が開いてきています。未だに福島第一原発の事故は収束していません。コントロールできていません。避難解除を受け、着々と街も整備され、前に動き出した地域がたくさんあります。一方でいまだ故郷に帰れない人がたくさんいます。仮設住宅に暮らしながら地元に帰る日を待つ人たちがいる一方、故郷に帰ることを諦め新しい場所での生活を始めている方もたくさんいます。震災の後遺症で亡くなる人もいまだにいます。
原発の必要性の有無、様々なことが言われ物事は複雑に語られていきます。ただ、あの震災と津波だけだったら、今ほど復興に差が生まれ、地元に帰ることを諦める人は少なかったはずです。立ち入りさえ制限される区域は存在しなかったのです。『フクシマ』という言葉の響きが、2011年3月11日以前のものに再びなるには、あと何年かかるのでしょうか。
心配すること、ただただ復興を願うことしか相変わらずできない自分なので、また曲を作りました。『春灯』と書いて「しゅんとう」と読みます。
ぜひ聴いてください。
来年以降も曲を作るかはわかりません。当たり前にやるかもしれません。ただ3月11日の、あの悲しみだけを切り取って一つの作品を作ることに少しずつ、違和感が生まれてきました。どの楽曲にも、含まれているように思うからです。逆にこの5年の間にも悲惨な事件、事故、大きな喜び、様々ありました。そしてそれらに常に影響されながら音楽を作っています。すべて混ざり合って「今」を生きている自分の音楽になっています。
あの大きすぎる体験を僕たちは忘れてはいけないと思います。次いつ来るかわからない大災害の被害を、少しでも食い止めることであの日の震災の意味を変えることができます。
世の中を見回すと人災、天災問わず悲劇は次から次に起きているように思います。感情が追いつかないほどめまぐるしい世界です。くじけそうになります。でもだから気付かされる人間の底力もあります。なるべくなら、光に眼を向けたいです。手を取り合って生きたいです。
こんな世界にも、鳴る意味のある音をこれからも鳴らしていきたいです。
今年も映像はコトリフィルムのみんなに作ってもらいました。僕がレコーディングで行けなかったので、今年はコトリスタッフ総出で臨んでもらいました。空は南相馬の空です。毎年、毎年、本当にありがとう。帰りの運転も気をつけてね。音源も例年と同じく菅井さんに協力してもらいました。感謝。
そして文章と映像を送ってくれた皆さん、どうもありがとう。一つ一つ読んでいるだけで、涙が出そうになりました。
震災で亡くなった方の魂が安らかでありますように。
今も被災し続ける方々に平穏な日々が訪れますように。
そして理不尽な力に、奪われたすべての命に、合掌。
洋次郎
「「春灯」」
ーー歌詞ーー
逢いたい人がいるこの世界には
せめて僕が生きる意味が わずかでも あるかな
夕暮れの雨のように 思い出は通り過ぎる
傘もないから 打たれるばかり
ガラにもなく難しい この世の仕組み憂いてみたり
すぐにボロが出て 苦笑い
そんな時も 隣に君が いたらな
君の眼に僕が映る ただ それだけでいいような
君を君たらしめる すべてを 僕の手にしたいような
あぁ したいような
逢いたい人がいるこの世界に
今日も目覚める 僕はきっと 幸せですよ
君の眼に僕が映る ただ それだけでいいような
君を君たらしめる すべてを 僕の手にしたいような
あぁ あぁ