先日、神戸芸術工科大学の生徒さんのインタビューを受けた。
礼儀正しくていい子たちだったな。
話しながら自分は学生のとき、生きるのに必死だったなと思い出した。
真っ暗闇な早朝から魚市場に行って働いて、魚臭い服を洗濯したあと学校に行って、帰ったらまたバイトに行って、夜は課題をして、そのあとは自分のアクセサリーブランドの製品を作って卸をして、生活費と学費を払うので精一杯だった。
シルバーアクセサリーの作り方は彫金の授業で覚えて、革細工は独学で学んだ。
先日、その彫金の先生と偶然明石のお祭りで会った。
ほんとにばったり。
ずっと会いたかった先生。
謝りたいことがあったのだ。
ぼくは授業中にも売るためのアクセサリーを作っていた。
その話をすると先生は、お前ほんまずっと勝手なことばっかりしてたよな〜と言った。
ある日の授業中、先生はぼくが自分で作ったアクセサリーを販売してることを知って、売ってるんやって？ と聞いてきた。
ぼくは、その時売ってないと嘘をついたのだ。
止められると思ったのだ。やめさせられると生きていけなかった。学校に通い続けられなかった。
だからどうしても本当のことが言えなくて、売ってないとつい言ってしまった。
今思えば、先生なら続けさせてくれたかもしれないなと思う。
でも当時のぼくには決して言えなかった。
先生は、ふーん、とそれだけ言って、二度と聞かなかった。
でもその嘘はそれからずっとぼくの心に刺さったままで21年経っていた。
ずっと謝りたかったのは嘘をついたことだ。
そのことを全部話した。
先生は、そんなことあったな！
と、膝を叩いた。
ほんまにすいませんでしたというぼくに、
そやそや、しょうもない嘘つきやがってと思ってたねん、せっせと作ってたよな、真面目に。
と、懐かしそうに笑ってくれた。
ぼくは、先生の教えてくれたことのおかげで生きてこれたと伝えた。
先生は娘と孫と一緒に来ていて幸せそうだった。
屋台で買ったビールを、ちっちゃい公園で一杯だけ一緒に飲んだ。
孫はぼくにピザをひとかけらくれた。
なんだかご褒美みたいで、夕焼け空だったら泣いてたかもしれない。
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