私の最近のマイブームは、
ウイスキーのブラインド・テイスティングです。
ブラインド・テイスティングというのは、
ただグラスに注がれただけのお酒を、
色、香り、味をヒントに、
地域、銘柄、熟成年などを当てるものです。
ウイスキーの蒸溜所は100ヶ所以上ありますし、
さらに各蒸溜所から何種類もの
ウイスキーが出ているわけですから、
そう簡単に当たるものではありません。
そうはいっても、蒸溜所ごとの「香り」や「味」を
しっかりと記憶して、珍しく的中したときの喜びは
格別なものです。
あるいは、最近では何とか、
「地域」まではわかるようになってきましたので、
「地域」だけでも的中するとうれしいものです。
「ブラインド・テイスティングの技術を磨くのに
何かいい本はないのか?」
と思ったときに出会ったのが、
田崎真也さんの
『言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力』です。
田崎真也さんといえば、
世界最優秀ソムリエコンクールに優勝し、
日本にワインブームを巻き起こした立役者でもあります。
ソムリエコンクールでは、
このブラインドテイスティングの技術が大きく影響するわけで、
田崎さんは、日本のワインのブラインド・テイスティングの
第一人者と言っていいでしょう。
そんな第一人者が、
ブラインド・テイスティングの方法について、
相当に詳しく書しいるのが、この本です。
実際のブラインド・テイスティングについて書かれた部分。
地域や醸造所や畑やビンテージを
どうやって特定していくのか。
その田崎さんの頭の中を公開した部分は、
「なるほど、そういうことだったのか」と、
ものすごく引きこまれました。
この本では、
ブラインドテイスティングの方法や
ワインの「香り」のとり方、
表現の仕方について書いていますが、
最も重要なのは、ワインのテクニックの話を超えて
「言葉にして伝える」ということの重要性だと感じました。。
そして、「言葉にして伝える」ための表現力を
どうやって磨くのか、という部分です。
それは、文章を書くすべての人に役立つノウハウと
言えるでしょう。
本書の中で、私の心に最も刺さった
一節を引用しておきましょう。
「言語化するということは、
記憶を整理しやすいツールに変え、
意味づけをすることで、より正確なものにして、
そして瞬時に呼び起こすことで、
自在に応用できるようにするための、
最適な方法だと僕は思っています。」
つまり、
「香り」や「味」といった曖昧なものを、
「言語化」することによって、記憶に残すことができる
ということです。
というか、
「香り」や「味」を記憶したいのであれば、
言語化するのが最もいい方法である、
ということでもあります。
これは、「香り」や「味」に限ったことではありません。
人間の感情や感動。
非言語的なものは、そのまま放置すると、忘れてしまうのです。
それを心に留めるためには、「言語化」しかありません。
つまり、言葉に置き換える。
文章で表現することで、
非言語的な感覚でも、永続的に残すことができるのだと。
私たちは、おいしいものを食べた時に、
Facebookに感想を書くわけですが、
もっと精緻に、詳細に表現できると、
さらにありありと「味」を記憶できるわけです。
そこで私も、もっと表現力を磨かなければ、
と「文章を書く」「表現する」ことについて、
非常にモチベーションを刺激されました。
食べ物、飲み物の味、香りを文章にして表現すると、
文章力、表現力の鍛錬になるのです。
文章力、表現力を上達させたい
という人には、非常に気付きの多い本となるはずです。
『言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力』
(田崎真也著、祥伝社)
http://amzn.to/1Tyrf2U
追伸 期せずして、
私は2000年から2004年にかけて、
札幌のスープカレー屋253店を食べ歩き、
全431皿の味を表現するという、という
とほうもない作業を行っていました。
それが今の自分の文章力の上達に役だっていたのか、
この田崎さんの本を読んで、はじめて発見できました。
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